生まれた街に競輪場があって、開催日になると灰色の年寄りが群れをなしバスで競輪場へ向かう。口の悪い自分はその光景を護送車と呼んでいた。
競輪場は馬を見に行くような若者なんて全くなくて、直ぐにでも路肩に倒れそうな者達ばかりだ*1。灰色の群れは串とコップ酒を片手に喚き唸り尽くすと道々に車券の花を撒きながら硬く動きにくくなった足を引きずって歩道橋に設けられたスロープを登る。
微々たる日銭を増やした者はバラックの屋台で燃料を注したり、魚屋の店先で刺身を摘んだりする。
銭湯帰りの自分はクラスメイトに教えられた旨いとも思ってもいないラーク等と言った煙草をふかしながら、それを眺めていた。
あまり地元という土地で遊んでいた記憶の無い自分が餓鬼だった頃の思い出。

*1:現によく倒れている。