『レ・ミゼラブル』劇場版を観たよ(ネタバレあり)

歌が素晴らしかった!
とにかく全キャストの歌が素晴らしいです。あとからフィルムに合わせた吹き替えではなく、セットの中で衣装を着て歌うことによって、登場人物そのままの人間に見えました。
革命前夜に4重奏で『ワン・デイ・モア』を歌うシーンでは「ブラボー!」と言いたくなるのをガマンしました。あと、舞台版だと存在感の薄いコゼットが主要キャラとしてこんなにも可憐に見えたのははじめてです。


セットと背景が素晴らしかった!
舞台版では数点のセットをとても上手く活用して様々なシーンに見せるのがとてもおもしろいのですが、さすが映画は迫力が違いました。
冒頭のドッグヤードの大迫力!囚人の仕事大変すぎる!舞台版では穴を掘ってるだけだったので、あまりの過酷さに「ここで19年て尊厳しいたげられすぎだよ!」と度肝を抜かれました。


ファンティーヌ演じるアン・ハサウェイの名演!
彼女の出てくるシーンは全て素晴らしかった!死が迫るシーンの母親らしさには泣かされました。有名な『夢破れて』を工場解雇されるところで歌うのが、娼婦になったところへ移動したのは、とても効果的だったと思います。


わたくしごととなりますが、
舞台版のレ・ミゼラブルは小学生時代の山本耕史がガブローシュを務めた1987年の初演以来、ずっと見続けているミュージカルです。
私の母は音楽やお芝居が好きなので、ありがたいことに小さな頃から宝塚やピーターパンなど子供でも楽しめる舞台を色々と観ていました。
しかし初演のレ・ミゼラブルを観に行ったとき、さっき挨拶に行った舞台裏で一緒に追いかけっこをした同じ歳くらいの子たちが、芝居が始まったとたん虐げられた役や、死んでしまう役を重く演じていることに客席の自分はかなりの衝撃を受けました。

その後は日本版の曲をほぼ歌えるようになるほど観に行っていますが、10代のころはエポニーヌに、子供を産んでからはファンテーヌに、と気持ちをゆさぶられる役柄が観るたびに変わるので、「このストーリーには老若男女さまざまな主役が居る」という事に気がつきました。
今回の映画版についての感想を読んでいても、ヴァルジャンに感情移入している人、テナルディエ夫人に感情移入している人など人それぞれなので、10年後またみると違うのではないでしょうか。(上映時間長いけど)



さて、
観賞直後にTwitterで少し触れましたが、今回の映画版を観劇して、ちょっと怒っていることもあります。

クローズアップが多すぎる!
カットが変わっても顔!右顔!左顔!上顔!正面顔!役者は全身で演技してるのに、そんなに顔ばっかり見せなくてもいいよ!せっかくの大画面なんだからこだわりの背景がもっと観たいよ!
セリフが歌しか無いからって歌ってる最中に市長室からいつのまにか自分の部屋に飛んだり編集もヘンテコだよ!


舞台版の見せ場がすっ飛ばされてるよ!
司教様に「さて我が兄弟」と招き入れられるシーン慌ただしい!もっと落ち着いて!
アンジョルラスがバリケードの上で逆さまで死ぬシーン!バリケードのデザインがダサいからなの?何故か店の2階で死ぬ!せめて望遠で撮ってカッコよくゆっくり見せて!
ガブローシュがバリケードの上に向かって拾い弾を投げる名シーンが無い!革命学生に上手くキャッチしてもらって「仔犬でもデカくなる…」と歌い終われないから号泣なのに、まさかのガブローシュ無駄死!
ジャン・ヴァルジャンの最期「お前は愛した母が預けた子だ、わたしは父じゃない」って一番大事な懺悔のシーンの字幕、天国行くことで精一杯になってる!


大事なことがズレてる!
ヴァルジャンに重きをおきすぎて「パンを盗んだ」ことを一生かけて償う話みたいになってます。
「パンが無くて…」じゃフランス革命の話になっちゃう。投獄されたヴァルジャンが憎かったのは「法と正義」、市民が戦ったのは貧しい者たちの尊厳を踏みにじる「法と正義」、それを体現してるのがジャベール。
「罪を許す神」と「罪を裁く神」それぞれを信じる者を様々な視点で描くので、見るたび感情移入する役が変わっていくのが「レ・ミゼラブル」のおもしろいところだと思います。



というわけで散々な言いようですが、ラストシーンは良かったです!ああいう高揚感がもっと欲しかった!



2013年4月から新演出・新キャストにてミュージカル「レ・ミゼラブル」が東京・博多・大阪・名古屋にて始まります。

帝国劇場 ミュージカル『レ・ミゼラブル』

鹿賀丈史など20年以上続けていたメンツが全員しりぞき、20代の若いメンツに入れ替わっています。
今回の映画で大好きになった人たちが、日本語舞台版をどう観るのか楽しみです。