おとうさん

コーマック マッカーシー
「ザ ロード」を読みました

ザ・ロード

ザ・ロード

○ときどき本読むよ
○子供がいるよ うちの子超かわいいよ
○父さん って何考えてるのか解んないなあ

どれか当てはまる
という人は読むといい

アカデミー賞受賞映画「ノーカントリー」の原作者 最新作

ピューリッツア賞受賞
アメリカではもうすぐ200万部突破
というのが 本当に怖い

「ミスト」「バットマン ダークナイト
につづき
絶望を感じながらも
生きるしかない状態というのを
ハッピーエンド狂なアメリカ人が 今どうして賞賛するのか


個人的なはなしですが

私がちいさいとき
夏休みになると父親は長期休暇をとって
山小屋で家族だけですごしてくれました

「パパが死んでおまえがパパより大人になったとき
 生き物としての地球は死んでいるだろう
 世界は終わってしまっているのに 生きていかなければならない
 おまえには申し訳ないが 未来はそこへ向っているよ」

「だから美味しいものをたくさん食べさせたいんだ」

すずしい山小屋で朝ごはんをたべながら
なんどか父親はそんなことを話しました


作者のマッカーシーは4歳の息子との
旅のとちゅう ねむる息子の横で
50年後 100年後の世界を想い
この本の構想を出したそうです

親になったものが考えうる
最悪の未来予想

いまそれが とてつもなく身近に感じるからこそ
ベストセラーになっているのではないか
と思うといたたまれない気持ちになります



話は
お父さんの子供の頃は美しい山、川、小鳥たちに遊んでもらうことができた
そんな近い未来

今あるのは凍える冬の世界
雨は灰をふくみ ふりつもる灰が地上をおおい
ビルの窓ガラスは溶けて地面で冷えかたまり
夜となると数センチ先も見えない
真っ暗な世界

食べるものは
強奪されつくした跡でみつけた ふくらんだ缶詰
納屋のすみに落ちていた ほこりまみれの穀物
そして それも叶わぬ者たちは 共食いをはじめている

父とちいさな息子は南をめざす
「南はあたたかいはず」
確信は無く 希望でしかない

すこしの荷物を入れたショッピングカートを押し
いのちを危険にさらしながら水と食料を探して
かれらは野宿をしながら少しづつ進む

テントをたてると目立つので
雨の中ビニールシートをかぶり
小さな焚き火で互いを暖めあう

ココアの小袋はんぶんを湯に溶かし
息子にあたえ 父はお湯を飲む

「それはしないって約束だったでしょ」
「え?」
「わかってるはずだよパパ」

父は息子のココアを自分のカップに少し移し
息子のココアを返す

「ちっちゃな約束をやぶるひとはおっきな約束をやぶるようになる
 パパがそう言ったんだ」
「そうだった もうしないよ」


美しいものなど何も無い世界で
父は息子を守るためならば他者を殺すしかない覚悟をもち

息子はそんな世界しか知らないというのに

「どうして助けてあげないの」
「ぼくたちは誰も殺さないよね」
「だれも食べないよね」

と父に問いつづける



あたりまえだと思っている
たべものの美味しさ
草花の美しさ
我が家のあたたかさ

そして
他者へのいたわり

すべてがかなわない
そんな状況のなか
父は息子へ
何を伝えればいいのだろう

懸命に命の火をショッピングカートに乗せ
ふたりは進む



読みはじめから辛いですが
だからイヤだとは思いたくないです
最後まで読んだときに
感じるものが無いわけないじゃないか

映画化が決定され
ヴィゴ モーテンセン主演で撮影が終わってるそうですが
もうれつに原作をおすすめ