電車内で

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その男はサパティスタ民族解放のTシャツを着ていた。走ってきたらしく、とても息が荒い。しかし休むことなく座ることなく、その場で鞄から布ガムテープを取り出し、おもむろにその鞄に巻きつけ始めた。「ビリッビリビリビビビビー!」勢いよくガムテープを伸ばすのでかなり大きな音だ。一駅分の時間を使いガムテープを巻く、もう黒い鞄はガムテープでグルグル巻きだ。次の駅に到着した途端、男は「・・・」と何か小さな声で呟き、猛スピードで電車を降りホームを去っていった。